福島
実際にこの損失補償に関して本市が金融会社の経営責任までとってしまう必要があるのかどうかお話させてください。
バブル崩壊後、たまった不良債権の処理方法が日本経済回復の大きなカギとなる訳ですが、この特定調停法の制定のアイデアは「貸した金融機関にも責任はあるでしょう」との考えからです。
しかし銀行の取引約款にもありますように、銀行の責任はゼロであり、借り手が
100%責任があるというのが日本の金融の慣行です。
そこで、貸し手責任を取り、せめて50・50(フィフティー・フィフティー)の状態でしていこうというのが債権放棄です。
しかし日本の道徳の中では債権放棄というのは「1度失敗したらまたチャンスが与えられない」ようなイメージがあります。不良債権を解消するため、そして1度失敗した企業にもチャンスを与えるために制定したのがこのシステムです。
そして、もちろん金融機関側にも責任を求めていくというのが特定調停法の立法化されたもともとの理由ですので、それに応じれば、損失補償を本市が過剰にして責任をとっていくのは、その理由から外れているのではないかと考えていいます。
つまり会社に対して貸し付けを行った金融機関には貸し付け時に会社が独立した法人であり、自主事業であることを認識した上で、担保を設定せず債務保証を得ずに、自己の計算のもとにその責任で貸し付けを行ったということでございます。そして返済される目算を誤ったとしても、それは自己責任の問題だというふうにこの特定調停法の制定では考えております。つまり金融機関側の責任が問われ、それは自己責任として貸し付けた責任というものが問われても仕方がないというふうに考える次第でございます。
そういう事情がございまして、また自治大臣官房の方でも公的支援のあり方を示す国の指針がございまして、その指針によれば、この損失補償を本市が過剰に責任を負うことは指針に反するというふうに考えております。まず、この指針では皆様御存じのように地方公共団体が出資を行っております第三セクターの経営悪化に伴う債務整理にかかわる公的支援のあり方に関して、1999年ですけれども通知がございます。この通知において自治大臣官房総務審議官は、第三セクター自体は法的に独立した事業主体であり、その債務について地方公共団体が出資者として負う法的な責任はあくまでも出資の範囲内であることから、地方公共団体は出資の範囲内の負担、損失補償契約に基づく負担、またはあらかじめ定められたリスク分担に基づく負担を負うにとどまるのが原則であり、上記有限責任の範囲を超えた損失補償契約等の債務負担行為の設定は将来の財政運営への影響を考慮して、真にやむを得ない場合に限定され、そして地方公共団体は過度の負担を負うことのないようにすべきという方針がございます。
そういう理由から損失補償の過度の引き受けは適切でないと思われますけれども、答弁をお願いいたします。
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森重
(港湾局管理部団体監理調整担当課長)
ただいま福島委員の方からいろいろ損失補償につきまして御意見をいただいたところでございますが、現在損失補償につきましては会社から提出されているところでございまして、この内容につきまして本市と銀行が協議するというようなことになってございまして、本市といたしましては、あくまでも先ほど申しましたように、リスクを最小限に回避するような方策をとるようにできるだけ努力させていただきたいと思います。
なお、損失補償につきましては、金利の低減と裏腹のものでございまして、今金融機関に要請してますのは、大阪市の調達金利でやってほしいということでございますので、大阪市の調達金利になりますと、金融機関としては大阪市並みであるためには損失補償を求めたいということが一つございます。
それにあと金融庁の関係で、不良債権処理の関係がございますので、損失補償はぜひしてほしいという要望はございますが、先ほども申し上げましたように、大阪市としては今後協議を進める中でリスクをできるだけ減らす形で、もし損失補償を行うとしてもそういう形でやっていきたいというふうに考えておりますし、これは近日中に意見を出さなきゃいけないんですが、その際にも十分専門家と調整し、裁判所に対して意見を提出させていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします。
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福島
また今の特定調停に引き続いてのことなんですけれども、私も今回第三セクターとしては初めて特定調停法を本市がとるわけですけれども、これまでの間で顕著な特定調停のあった例というのをちょっと調べてみまして、
民間の会社でしたら井上工業という会社が2000年に、これは東証二部上場の中堅のゼネコン会社ですけれども、この会社が
143億円を免除されたというケースがございます。これはまさに先ほど申し上げたように、バブルの崩壊後の不良債権の処理とか、中小企業を救うための目的に合った方法で、特定調停がうまくいった例でございますけれども、もちろんこの特定調停というのは強制力はございませんので、事前合意が当事者でなされた場合に限られまして、もちろんこの場合でしたら大きな銀行、群馬銀行、足利銀行との間で既に事前合意がなされており、その結果この特定調停がうまくいったということでございます。法的に申し上げますと、債権放棄について事前に根回しをしておいて、合意ができそうな段階で裁判所での特定調停に持ち込むというのが実際の方法だと、現実の場合はそういったところでございます。もちろん調停ですので、裁判所では調停委員として仲裁人を定めますけれども、基本的には話し合いの場を提供するということでございまして、実質は私的で任意の債権放棄でございまして、特定調停の場を使うことで金融機関の稟議が通りやすくなり、何よりも税務上の貸し倒れ処理を安心してできることになるということでございます。
そして先ほどから委員の皆様申し上げていらっしゃるように、本市の威厳を保つ、また社会的な影響をかんがみて特定調停の方法がとられているというふうに思われます。
そして、また大阪府の方では2002年に特定調停の合意がされましたけれども、阪南中央病院というのが大阪府松原市にございますが、これは2002年3月に32億円の債権放棄と民営化に向けて自立再建計画が議会に提案されまして、これも一つの参考にはなるかと思うんですけれども、ちょうど1年前、2002年11月に累積債務の88億円が16億円に免除され、大阪府からも経営基盤強化補助金が病院に支給されて特定調停が成立したということで参考までに申し上げておきます。
この特定調停が、もちろん關次期市長も申し上げているとおりに必ず成功に持っていかなければならないと思いますけれども、調停成立に向けたビジョンがもしございましたらお聞かせ願いたいと思います。
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森重
(港湾局管理部団体監理調整担当課長)
お答えいたします。
調停にこれから臨む姿勢でございますが、もちろん今回これまで御議論いただきましたことを近日中に早急にまとめまして、裁判所の方に意見として提出させていただきたいと思います。
我々といたしましては、あくまで中小企業等に、テナント等に迷惑をかけないように特定調停を目指して、金融機関と一日も早く合意を目指して努力させていただくつもりでございますので、よろしくお願いしたいと思います。
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福島
ありがとうございます。もちろん今おっしゃっていただいたように、必ずこの特定調停を、第三セクターを扱う地方自治体として必ず成功に導かなければならないんですけれども、しかしながら、日本にある自治体では特定調停において問題を抱えたケースもありますので、そのことも御紹介したいと思います。
第三セクターでは本市が初めてでございますので、これは公社のことでございますけれども、北海道におきましてあった事例を御参考までにお話しさせていただきたいと思います。北海道では2003年に、まだこれは審理中のお話でございますけれども、北海道の住宅供給公社が16の金融機関に債権放棄を求めて特定調停を申請するという事例がございました。これはもちろん三セクではございません。しかしながら、この大口債権者である16のうちの1つの一番大きな住宅金融公庫が途中で調停から離脱するという事例もございまして、そして今、もう一度現在、一番最近2003年12月の話ですけれども、また新しい調停案を本市と同じように出して、しかしながらまだこの住宅金融公庫も離脱するような姿勢であって北海道としても困っておるという事例が1つございます。
そして、きのうの委員会でも質問があったというふうにお聞きしておりますけれども、同じような事例が和歌山でも、和歌山県の土地開発公社が金融機関5団体に対して特定調停を行っている話もありますが、しかしながらこの特定調停は合意に至らなかったために、地方裁判所は両者に民事調停法に基づく決定を提示したということでございます。そして2週間以内に異議申し立てがなければ、もうこの方式に沿って決まってしまうということでございますので、本市としても特定調停法でいくというふうに決められ、そしてこの方法で必ず成功してほしいと思いますが、しかしながらもし特定調停が合意に至らない場合は、もちろん裁判所に強制力がない、もしくは欠くために、成立しない場合は民事再生の可能性ですとかあると思いますけれども、そういった最悪の事態に関しての心づもり、もしくはそういった予想、対策というのはされていらっしゃるかどうか、御答弁お願いします。
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森重
(港湾局管理部団体監理調整担当課長)
お答えいたします。
今、特定調停が成り立たない場合の法的整理というんですか、民事再生あるいは会社更生に移らざるを得ないということでございますが、我々といたしましては、あくまでも当事者の合意を求めまして、先ほど申しましたテナント等に迷惑をかけない、あるいは会社が倒産というような社会的な失墜を受けないというようなことを第一義に考えております。
あくまでも裁判所を介しまして、特定調停の中で解決を図ることを第一義に考えておりますので、よろしくお願いしたいと思います。
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